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YOKOTA TOKYOでは高山登(1944-2023)の展覧会を開催いたします。
高山登は1944年生まれ、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻入学後、在学中に北海道の炭鉱を巡り、1968年より当時住んでいたアパートの敷地内 (スペース戸塚) にて枕木による試作を始めました。木材に防腐加工を施した枕木という素材と、その背後にある社会的・歴史的側面に向き合い、生涯をかけて多くのインスタレーションやパフォーマンスを行ってきました。昨年、惜しむらくも逝去された高山登の作品を展示するとともに、彼のバイオグラフィーをまとめました。

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 いつだったか誰か、「枕木かついでどこへ行く」と言った。さてどこへ行くのか。一応美術という名のもとに枕木を作りそれを積んだり並べたりしているのだが、それがどういうことなのか、私には解っていない。一応ああでもない、 こうでもないと理屈のようなことを言うのだが、だが何か枕木を並べ、置くことに何故か全身が動き出し、何かが体の中をかけめぐる楽しみを感じるのだ。それは枕木そのものではなく、その関係の中に新しい表象を見いだすからだと思っている。その表象とは、重力・量・関係・引力・動き出す空間・そして闇が生まれてくる時間・空間。そして沈黙の力は負の力・正の力の場の中でアンビバレンツな緊張を生む。それを皮膚が、筋肉が、神経が、背骨が、静かな振動を感じ、その真っただ中へと向かう。そう死へと向かう。黄泉の国へと向かう。 

高山 登
「随想 枕木について」より