ギャラリーに携わってから50年余り、その当初から個々の作家の展覧会を離れ、二つの自立した展示を思い描いていた。その一つは書籍、版画などの複数制作物や印刷一般に関わる〈Printed Matter〉、また一方は「表現」と称される言葉が生まれる以前の人間の創造営為に視点を置いた〈Fragment〉。前者は展覧の数を重ね、その展開は東京パブリッシングハウス(TPH)の活動となり、現在はYOKOTA TOKYOの元で名称、活動内容も変わらずに引き継がれている。他方、〈Fragment〉については時宜通り、断片的な展示を重ねた上、その最終項は「人間」と朧げな思いを抱きつつ、過去3回の展示を実現したのみで、この気宇壮大な想いだけが募り現在に至ってしまった。
この永い余白の時間、一人また一人と私の元に人像が訪ね集まってきた。壮大な想いはさておき、ともあれ時代を共にする五人の作家と一同に会するAgoraを設けることとした。
時空を超え人間自身に心を寄せ続ける人々へのオマージュとして……。
横田 茂