YOKOTA TOKYOでは、スーザン・ヘフナによる個展「LISTEN TO」を開催いたします。
弊廊では2回目となる本展では、多様なメディアを横断するヘフナの制作より、布・ガラスなどの軽やかで透明な素材と「言葉」によって構成された近作と写真先品を紹介します。
LISTEN TO —
ヘフナの作品は、日常の中では感じることの出来ない声に耳を澄ます契機を与えてくれます。
彼女の作品は、何枚かの透過する紙が糸で縫い合わされ、あるいは黒いエジプト綿によるタペストリーの上で白い点がネットワークを形成し、繊細ながらも強固な構造を持っています。それらは時に、衣服やバックとして身体に寄り添い、日常のなかへと溶け込みます。
この多層的な構造は、へフナがエジプトとドイツ、異なる文化圏のもとで培った感性に基づきながら、私たちが属する社会や文化の多様性を象徴的に表しています。
“Air” “Water” “Sun”、
そして “time” “truth” “silence”
作品にしばしば登場する「無媒介的な言葉(unmediated words)」は、マニフェストのように力強く語りかけながらも、直接的な意味を伝えるものではありません。英語やアラビア語の単語、あるいは記号のような文字が、点や線で折り重なるように布に縫い込まれ、呼吸するように浮かび上がります。またはガラスの作品では、刻まれた言葉の影が揺れ静かに語り掛けてきます。
それは詩やマントラのように、あるいは禅における「不立文字」——言葉を超えて真理を求める態度——意味や感情の先にある、「存在の状態」へと静かに働きかけるようです。
ヘフナの試みは、文化や社会、重なり合う層の「間(あいだ)」を見つめ、人と世界との交感を可視化するものです。同時にそれは、体験として感覚を呼び覚ます装置のようでもあります。
“LISTEN TO=耳を傾ける”とは、単に音を聴く行為にとどまりません。他者や自然、そして自らの内に潜む声に気づくための姿勢——世界と自己を結び直すための行為でもあります。
「聴く」とは、ときに「無音を聴く」ことに等しいとされます。沈黙の中で、私たちは気づかなかった音に気づき、耳を傾ける……静かな思索と、エレガントに鮮やかに、色彩や生命感が溢れる作品に触れ、内にある声に耳を傾けていただければ幸いです。