YOKOTA TOKYOではarchiveへの取り組みの一つとして中西夏之「砂絵の再生」を行います。
中西は1975年に《カーボランダム・ホワイトランダム》と題された、白と黒の二種類の金属砂を用いた作品を初めて発表しました。この作品は、床から水平に浮いた左右2つのテーブルと、その間に橋渡しされた上皿天秤の3つの部分から成り立っています。そして、それらテーブルの上に落とされた砂は、展示ののち落とされ、片づけられ、またいずれか再生されるものとして予め想定されていました。これまで、現れる文字などを組み替えながら《カーボランダム・ホワイトランダム》は5度制作されてきました。
このたびの再生では、作家が思考していた試みを知り、また中西により今後も期待される再生の儀式の連なりとなればと考えています。
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全体、すべてのものは重力のなすがままに横たわっている。
今はこのように砂面を、水平面に展開しているが、この場所が、砂面と水平面にとって最終地ではなく、何時か、ここから撤回され、他処で、同じような姿を現すかも知れない。
(中略)
何らかの力、この作品部分自体の性質で変化し、崩れてしまった時、元の姿に戻してやることは、単調な繰返し、再び不変たらうとする復元ではなく、儀式をともなう再生である。
一回性の儀式が、一定の形式、シキタリ、秩序にしたがって周期的に繰返し、繰返されても、それに立会い、加わる者にとって、新鮮な気分が繰返しの都度おとずれる。
再び、この水平面に砂を落し、ある秩序で砂面を設定する作業:元に戻す作業の所作は、初めに設定された時に似て新鮮である。
(中略)
この砂の作品の崩壊が期待するのは再生の儀式である。
砂を落とす前に(1977年) [『砂絵の再生』(未刊行)より]
写真:《カーボランダム・ホワイトランダム》2017年 展示風景より