YOKOTA TOKYOでは「若林奮 夏欧 ― 私の家」展を開催いたします。
彫刻家・若林奮は、娘たちのために〈おもちゃ〉を作りました。
人形や家、糸巻きの車といった玩具は、作家の身近にあった素材を用いながら、柔らかな温もりと驚くほど彫刻的な造形を備えています。物であったはずのものは日常から離れ、お伽話やSFの世界へと羽ばたくような想像力が息づいています。
〈おもちゃ〉でありながら〈彫刻〉でもある造形は、親子の情景を垣間見るようでもあり、また私たち自身にとっても懐かしい時間へ帰るかのようです。鉄の彫刻家として知られる若林奮の、強靱さと柔らさを併せ持つ側面に触れることができるかもしれません。
また、会期にあわせて若林夏欧による書き下ろしテキストを収録したアーティスト・ブック『私の家』を限定部数で刊行いたします。
ぜひご覧いただければ幸いです。
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小さい頃の様子はなんとなく覚えている。20年前は、今と違ってのんびりしていた。何をして遊んでいたのかはっきりとは覚えていないが、父の造った人形の家と玩具でよく遊んだ。(中略)父は私の好きな物を絵本や玩具にしてくれたと思う。わたしはねこやOZ(オズの魔法つかい)のお話が好きなので、今でも父の絵本や玩具をとても大事にしている。
− 若林夏欧 2003年9月20日
今回、出品する作品(玩具・絵本等)は、その当時、実際に遊んだものが多くあります。なかには子供達もあまり触れずに飾っておいた物もありますが、それ以外のものは、子供が遊びに使用したものであります。その為、彩色が薄れていたり、紙が痛んでいたり、いわば古びて繊細な状態になっています。これだけよごれたり、痛んだりしたことは、玩具や絵本をつくった者としてはむしろ喜ばしいことと思っています。(中略)今あらためて玩具や絵本を見ると、又造りたくなります。とはいえ、この様な物を造ることは二度とはできないのでしょう。
− 若林奮 2003年9月20日
「作家からの贈りもの」展(2003年)図録より再録